腰痛対策には胸郭の動きも重要

身体をひねると腰が痛い、腕を上げると腰が反ってしまう。腰痛対策を続けているのに、なかなか身体が動きやすくならない。

このような悩みがある場合、腰だけでなく、胸まわりにある「胸郭」の硬さが関係している可能性があります。

胸郭とは、胸椎・肋骨・胸骨などで構成される、かごのような部分です。肺や心臓などを守るだけでなく、呼吸や姿勢、身体をひねる動き、腕を上げる動きにも関わっています。

パソコンやスマートフォンを長時間使用していると、背中が丸くなり、胸郭が潰れたような姿勢になりがちです。その状態が続くと、胸郭の動きが少なくなり、身体を反らす・倒す・ひねる動作を腰だけで補いやすくなります。

腰への負担を分散するためにも、胸郭をさまざまな方向へ動かすことが大切です。

この記事では、胸郭の状態を確認するセルフチェックと、ピラティスを取り入れた5つのエクササイズを紹介します。

エクササイズ前に胸郭の動きを評価しよう

運動を始める前に、現在の身体の状態を確認しておきましょう。

エクササイズ後に同じ動きを行うと、左右差や動きやすさの変化を比較できます。

評価1:身体を左右へ倒す

椅子に座り、骨盤を正面の壁と平行にします。両手を胸の前で組み、姿勢を起こしてください。

その姿勢から、身体をゆっくり左へ倒します。中央へ戻ったら、今度は右へ倒しましょう。

次のポイントを確認してください。

  • 右と左で倒しやすさが違わないか
  • 片側だけに詰まりを感じないか
  • お尻が浮いていないか
  • 腰だけを曲げていないか
  • 呼吸を止めていないか

無理に深く倒す必要はありません。現在の左右差を確認することが目的です。

評価2:身体を左右へひねる

椅子に座ったまま、骨盤を正面に保ちます。

両手を胸の前で組み、身体をゆっくり左へ回してください。中央へ戻ったら、右側へも回します。

骨盤が一緒に回らないように注意しながら、胸まわりの動きや左右差を確認しましょう。

鏡の前で行うほか、スマートフォンのインカメラで撮影すると、自分の動きを客観的に確認できます。

評価3:壁を使って腕を上げる

壁に背中をつけて立ち、両腕をゆっくり頭の上へ上げます。

腕を上げたときに、腰が大きく反っていないか確認してください。

腰の位置をできるだけ変えず、背中や肩まわりを使って、どの高さまで腕を上げられるかを確認します。

ただし、肩関節の柔軟性も影響する評価です。肩に痛みがある場合は、痛くない範囲で行いましょう。

評価4:呼吸で肋骨が広がるか確認する

両手を、みぞおちの少し下にある左右の肋骨へ置きます。

鼻から大きく息を吸い、口からゆっくり吐きましょう。

息を吸ったときに、肋骨が横方向へ広がるか確認してください。

肩だけが大きく上がる、お腹だけが前へ動く、左右の広がり方が違う場合は、胸郭の動きが偏っている可能性があります。

胸郭が腰痛や身体のパフォーマンスに関係する理由

胸郭は呼吸をするだけの場所ではありません。

身体を反る、丸める、横へ倒す、ひねるといった脊柱の動きにも関係しています。さらに、歩行時の腕振りや、ゴルフなどのスポーツ、頭の上へ腕を伸ばす動作にも必要です。

胸郭が十分に動かないと、不足している動きを腰で補いやすくなります。その結果、腰の反りや回旋が大きくなり、腰へ負担が集中することがあります。

大切なのは、胸郭をただ柔らかくすることではありません。

胸郭は必要な方向へ動かしながら、腰と骨盤は必要以上に動かさない。この役割分担を身につけることが、腰に頼らない身体づくりにつながります。

今回紹介する5つのエクササイズは、動く方向や呼吸のタイミングが大切です。

文章や写真だけでは分かりにくい部分もあるため、YouTubeでは実際の動きを見せながら詳しく解説しています。動画と一緒に身体を動かしたい方は、こちらをご覧ください。

▶︎ 【動画で実践】腰痛対策におすすめの胸郭ピラティス5選

胸郭を動かすピラティスエクササイズ5選

これから、胸郭の側屈・回旋・伸展を引き出し、最後に全身の動きへつなげるエクササイズを紹介します。

痛みのない範囲で、呼吸を止めずに行いましょう。

1.マーメイド

マーメイドは、胸郭の側面や広背筋を伸ばしながら、呼吸によって肋骨の動きを引き出すエクササイズです。

やり方

  1. 床に座り、骨盤を起こします。
  2. 片手を床へ置き、反対の手を天井方向へ伸ばします。
  3. 息を吸いながら、身体をゆっくり横へ倒します。
  4. 上側の肋骨を横へ広げるように呼吸します。
  5. ゆっくり中央へ戻り、反対側も行います。

左右それぞれ6〜10回を目安に行ってください。

ポイント

  • お尻を床から浮かせない
  • 背中を丸めない
  • 腰だけを横へ曲げない
  • 肘を伸ばして指先を遠くへ伸ばす
  • 上側の肋骨へ空気を入れる

股関節や膝がつらい場合は、あぐらや椅子座位でも行えます。

2.四つ這い胸郭サイドベンド

四つ這いで胸郭を左右へ動かすエクササイズです。骨盤を安定させながら、胸郭の側屈を引き出します。

やり方

  1. 手を肩の下、膝を股関節の下に置きます。
  2. 両手で床を押し、四つ這いの姿勢を保ちます。
  3. 骨盤を大きく動かさず、胸郭から右のお尻をのぞき込みます。
  4. 中央へ戻り、反対側のお尻ものぞき込みます。
  5. 左右交互に繰り返します。

左右合わせて10回を目安に行いましょう。

ポイント

  • 左右の膝へ均等に体重をかける
  • 骨盤を大きく横へ動かさない
  • 肩だけを左右へ動かさない
  • 息を吐きながら身体を曲げる
  • 無理にお尻を見ようとしない

左右差があっても、無理に同じ可動域まで動かす必要はありません。

3.四つ這い胸郭ローテーション

胸郭の回旋を引き出すエクササイズです。

腕だけで動かすのではなく、胸から天井方向を向くことがポイントです。

やり方

  1. 四つ這いになり、片手を後頭部へ置きます。
  2. 息を吸いながら、肘と胸を天井方向へ向けます。
  3. 胸郭を回旋させたら、ゆっくり元の位置へ戻ります。
  4. 片側を繰り返した後、反対側も行います。

左右それぞれ5〜10回を目安に行ってください。

ポイント

  • 骨盤を正面に保つ
  • 腰だけをひねらない
  • 首だけで天井を見ない
  • 胸の中心から回旋する
  • 支持側の手で床を押す

手を天井へ伸ばす方法もありますが、腕の動きで代償しやすい場合は、手を後頭部へ置く方法がおすすめです。

4.スワンプレップ

スワンプレップは、うつ伏せで胸椎の伸展を引き出すエクササイズです。

腰を大きく反らすのではなく、胸を前へ伸ばしながら上半身を起こします。

やり方

  1. うつ伏せになり、両手を顔または胸の横へ置きます。
  2. 息を吸いながら、頭から順番に上半身を起こします。
  3. 胸骨を正面の壁へ向けるように、胸を前上方へ伸ばします。
  4. 息を吐きながら、背骨を下から一つずつ床へ戻します。

5〜10回を目安に行いましょう。

ポイント

  • 高く起きることを目的にしない
  • 腰から反らない
  • 肩をすくめない
  • 胸を前へ長く伸ばす
  • 痛みのない範囲で行う

身体が硬い方や腰に不安がある方は、手を前方へ置くと負荷を軽くできます。

腰を反ると痛い方、骨粗鬆症や圧迫骨折の既往がある方は、無理に行わないでください。

5.バードドッグクランチ

バードドッグクランチは、胸郭の屈曲・伸展と対角線の手足の動きを組み合わせるエクササイズです。

胸郭を動かしながら腰と骨盤を安定させるため、より全身的な運動になります。

やり方

  1. 四つ這いになります。
  2. 右手と左脚など、対角の手足をまっすぐ伸ばします。
  3. 息を吐きながら、身体の下で肘と膝を引き寄せます。
  4. 息を吸いながら、手足を遠くへ伸ばします。
  5. 片側を繰り返した後、反対側も行います。

左右それぞれ5〜10回を目安に行ってください。

ポイント

  • 伸ばした脚を高く上げすぎない
  • 手足を遠くへ伸ばす
  • 腰を大きく反らない
  • 肘と膝を寄せるときは、みぞおちから丸める
  • 支持側の肩へ沈み込まない
  • 骨盤をできるだけ床と平行に保つ

難しい場合は、腕だけ、または脚だけを伸ばす方法から始めましょう。

エクササイズ後にもう一度評価しよう

5種目が終わったら、最初に行った評価を繰り返します。

左右への側屈と回旋を再評価する

両手を胸の前で組み、身体を左右へ倒したり、ひねったりします。

運動前と比べて、次の変化を確認してください。

  • 身体を倒しやすくなったか
  • 回旋しやすくなったか
  • 左右差が変化したか
  • 腰の詰まりや負担が減ったか
  • 呼吸を止めずに動けるか

腕の上げやすさを再評価する

壁に背中をつけ、両腕を上げます。

腕を上げたときに、腰の反りや肋骨の飛び出しが減っているか確認しましょう。

呼吸を再評価する

みぞおちの下にある左右の肋骨へ手を置き、深く呼吸します。

肋骨の横への広がり方や、左右差、呼吸のしやすさを確認してください。

一度で大きく変化しなくても問題ありません。無理に可動域を広げず、腰に頼らない動き方を繰り返し練習しましょう。

胸郭を硬くしないための日常習慣

エクササイズだけでなく、普段から同じ姿勢を続けないことも大切です。

30分から1時間に一度は姿勢を変える

長時間座り続けると、胸郭が潰れた姿勢になりやすく、呼吸も浅くなります。

30分から1時間に一度を目安に、席を立ちましょう。

  • 1〜2分歩く
  • 身体を左右へ軽くひねる
  • 腕を上げる
  • 深呼吸を3回行う

短時間でも構いません。同じ姿勢の連続時間を減らすことが重要です。

深く呼吸できる姿勢を意識する

デスクワーク中に背中が丸くなってきたら、一度姿勢を起こします。

ただし、胸を張りすぎて腰を反らないように注意してください。

顎を軽く引き、頭頂部が上から引っ張られるように姿勢を起こします。その状態で、肋骨の横や背中側へ空気を入れるように深呼吸しましょう。

良い姿勢とは、身体を固めた姿勢ではありません。

深く呼吸でき、必要なときにすぐ動ける姿勢を目指してください。

スマートフォンやパソコンの連続使用を減らす

スマートフォンやパソコン自体が、胸郭を硬くするわけではありません。

問題になりやすいのは、呼吸が浅くなった状態で、同じ姿勢を長時間続けることです。

総使用時間を見直すとともに、長時間連続して使用しないことも意識しましょう。

胸郭を動かして腰に頼らない身体をつくろう

腰痛対策というと、腰を伸ばしたり腹筋を鍛えたりする方法を思い浮かべるかもしれません。

しかし、身体は腰だけで動いているわけではありません。胸郭や股関節など、周囲の部分が適切に動くことで、腰への負担を分散できます。

今回紹介したエクササイズでは、胸郭の側屈・回旋・伸展を引き出し、最後に体幹を安定させながら手足を動かします。

胸郭は必要な方向へ動かし、腰と骨盤は必要以上に動かさない。この役割分担を身につけることが、腰に頼らずパフォーマンスを発揮できる身体につながります。

週3回程度を目安に、痛みのない範囲で続けてみてください。

※本記事は健康維持を目的とした一般的な情報です。症状の診断や治療を目的としたものではありません。強い痛みやしびれ、筋力低下、排尿・排便の異常などがある場合は、運動を中止して医療機関へご相談ください。

胸郭の動きを改善するためには、無理に大きく動かすのではなく、呼吸を続けながら気持ちよく動かすことが大切です。

YouTubeでは、今回紹介したセルフチェックと5つのエクササイズを、理学療法士・ピラティスインストラクターの視点から実演しています。

「フォームが合っているか確認したい」
「動画を見ながら一緒に運動したい」

という方は、ぜひこちらの動画をご活用ください。

▶︎ 腰痛対策は腰だけじゃない!胸郭を動かすピラティスエクササイズ5選

チャンネル「KAZUYAの健康貯筋」では、痛みを予防しながら、動ける身体をつくるための運動や身体の知識を発信しています。今後も継続して身体を整えたい方は、チャンネル登録もよろしくお願いします。

ABOUT ME
カズヤ
病院で理学療法士(リハビリ)として勤務。 共働き世帯が増えて行くなか、子育てや仕事を両立することが難しくなってると思います。そんな悩みを解決できるように主観だけではなく、書籍や今の仕事の知識をいかして客観的にも発信できないかと思い、執筆をしています。 絵を描くことが趣味でここにあるイラストは自分で描いているものになります。